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再会してから初めて見た眠る姿。いつもなら消している足音を、わざと響かせて歩いていくと、王子はふるふると睫が震わせて睛を開いた。左の腕一帯に咲かせた青い菫に顔を寄せ
「良い匂い、」
と微笑んだ。ちゃんと意思を持った王子のままだ。安心したαが横になった王子を起こそうと手を伸ばすと
「あ、触っちゃだめ。」
つれなく断られて、見るからに肩を落としたαに、王子が妥協案を示した。
「少し摘んでくれる、」
何か王子の機嫌を損ねたのか、と思ったが。αが触れると受粉して結実すれば花が枯れてしまうのが嫌だっただけのようだ。
「喜んで」
細い腕に咲く可憐なニオイスミレを摘みながら、零れだしたスワンミルクを舐めていると、
「もうそれぐらいあれば良いから」
心なしか頬を赤らめた王子がαに腕を伸ばした。お許しが出たので、さっそくその指先を取って口付けを落とす。すると焦れた王子が腕をひいて、αは王子の上に倒れこんだ。
「ぎゅっとして。」
「はい、仰せのとおりに。」
甘い菫の薫りに包まれて幸せな時間が過ぎていった。
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