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「失敗したんだって、第二王子と。」
βが聞くと
「あぁ。」
αは面倒くさそうに答えた。
「わざとだろう。」
熱くなって詰め寄るβを見ても
「それを言う為に病院まで来たのか、」
αはいつも通り、冷静なままだった。
「そんなに王子が…第一王子が好きなの、」
落ち着いたβが静かに呟くと、αは曖昧に微笑んだ。
「ぼくにはきみの考えてることが理解出来ないよ。」
「当たり前さ、どんなに外見が似ていても、きみとぼくは違うんだもの。」
βは何だか突き放されたように感じて苦しかった。
頬を拭う指も、重なった唇も自分と寸ぶん違わぬ色と形をしている。
けれど相手がαだから嫌になるほど鼓動は高まるのだった。
陽に温められた海の、波間を漂うような穏やかで優しい触れ合い。
でも錯覚してはいけない彼の手は王子のためにあるのだから。
「お願いもう少しだけ……」
αは泣きたくなるように優しいキスをくれた。
今だけ、きみはぼくのもの。
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