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「イッくん顔赤いよ。」
いきなり近付いてくる七月。額でも触るつもりだろうと思って油断していたら、腕を伸ばすどころか、躰ごと一の側ににじり寄って、首筋へと顔を埋めた。
「やっ……」
触れ合う頬と頬、頸に触れた唇は、いつもより速く脈打つ上を辿っていく。思わず身震いしてしまい、一が七月の肩に腕を伸ばそうとすると、あっけなく離れていった。
「な、何するんだよ、」
赤面して怒るぼくと違って、七月は平気な顔をして
「熱を測っただけさ。」
と言い張った。
「微熱ってとこか、偏桃腺も腫れてないし。」
まだ赤みの消えない一の頬に、手を当てると
「ほら、ぼくの手冷たいだろう。だからいつも頬か唇で熱を測るんだ。ごめん気に障った、」
そんな哀しそうな睛をするなんて、反則だ。
「そういう訳ぢゃ…恥ずかしかっただけ。」
「半分はわざとなんだ。」
耳元に囁かれてまた頬に血が上る。
「え、」
「さっきからぼくのこと考えてたんだろう、」
なんて自信家なんだろう。まぁ実際七月の事を考えていたんだけど。
「もう絶対に教えてやらない。」
口を開けば負けてしまう、と黙り込んだが、これでは肯定しているのと同じかも知れない。
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