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月彦は気が付けば何時の間にか庭のミシンの側へ横たわっていた。
まだ薄暗い時間にどうして庭にいるのだろうか
「寝惚けていたのかな、」
起き上がって伸びをすると体中、全身が痛かった。変な姿勢で寝ていた所為だろう。ふと目の端に瓦礫が映る。すっかり錆ついてしまっていたミシンが崩れてしまったようだ。よく見ると金属の欠けらの隙間に真黒な天鵞絨の毛玉が見え隠れしている。残骸の山を崩さないよう、そっと抱き上げると、仔猫はもっと遊んでいたかったと言わんばかりにジタバタ暴れ出した。
「黒蜜糖、ひとりで外にでたら危ないだろう。」
家の中へ入った月彦は
「あ、僕が扉を開けたのか……」
と気が付いて決まりが悪くなった。部屋の扉を開けると、寝台の上で銀色がくるん、と丸くなって眠っていた。腕の中の黒蜜糖も、すぅすぅと気持ち良さそうに寝息を立てている。
「もう一寝入りするか。」
月彦もつられて欠伸をし、黒蜜糖と一緒に銀色の横へ並んだ。遠くで自転車の音が聞こえる。牛乳配達がやって来たのだろう。
次に目が覚めた時には、新鮮なミルクの並ぶ幸せな朝食が待っている。
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